【下北沢】劇団フライングステージ第32回公演「新・こころ」
明治の文豪・夏目漱石の名作「こころ」を、関根信一がある視点で読み直した劇団フライングステージ最新作。 劇場へ行こう!〜駅前劇場編〜参加作品。以下、フライヤー裏面掲載の関根信一さんコメント全文。

明治の末、語り手である「私」は、鎌倉の海で「先生」に出会い、 その後、先生との交流を深めていく。先生と奥さんとの関係は妙にさびしい。 「私」は、その後、先生から遺書を送られる。そこには、 彼がかつて、友人の「K」を裏切り、奥さんと結婚したのだということ、そして、 「K」は自殺してしまい、自分のもまた「明治の精神に殉じて」死んでいくのだということが描かれてあった。

初めて読んだ中学生のころ、僕の「こころ」の印象は、「変な小説だな」というものでした。 なんだか妙にうそっぽい。それは、子どもの頃出会った文学作品にありがちですが、大人になって、自分はゲイであるとわかった上で読み直した「こころ」は全く違う小説になっていました。

そして、同時に新たな疑問も生まれてきました。「私」は「先生」につきまといすぎじゃないか? そして、先生が 「K」に死なれたあと、人が変わったようになってしまうのはなんでなんだろう?  もちろん、漱石は合理的な説明をしていますが、僕には「ほんとうかな?」と思えてしかたありません。 じゃあ「ほんとうのこと」は何だろう?  そんな「ほんとうかな?」という視点で読み直した「こころ」を舞台化してみようと思います。 漱石が描いた明治の男たちの思いのありようから、彼らの「恋」と「友情」を読み取って。

小説が時代そのままを映すとは思いませんが、少なくとも手がかりにはなるはずです。 しかも、「こころ」の小説としての構造は特殊で、「K」や「奥さん」との交流、そして「K」の自殺といった出来事は、 すべて「先生」の遺書の中で一人称で語られるのみです。

僕は、ここにつけいってみようと思います。描かれた事柄は事実だとしても「先生」のほんとうの思いは描かれていないんじゃないか。一人称で語られるミステリーのように。

森鴎外の自伝的小説「イタ・セクスアリス」(明治42年)では、旧制高校の寄宿舎における 「男色」の流行が当たり前のことのように描かれています。男色と同性愛が別のものであることは承知の上で言わせてもらえば、 時代に許容されていた男同士の恋愛が、大正になった途端、エロ、グロ、変態性欲ということになってしまう。

この世の中の大きな変化、そのまさに転換点に、漱石の「こころ」があり、「先生」がいるんじゃないだろうか。そう思ったときから、 漱石の人物たちは、違った顔を僕に見せ始めました。

本公演とは別のパロディの舞台「贋作」シリーズをいくつも作りだしてきたフライングステージですが、今回は、「贋作・こころ」ではなく、あえて「新・こころ」というタイトルです。古典の舞台化で堅苦しくなるんじゃないかという心配は無用です。オール男性のキャストで描く、キャンプな「こころ」をごらんいただきましょう。みなさまのご来場をお待ちしています。

■作・演出:関根信一 ■原作:夏目漱石「こころ」より
■出演:岸本啓孝/遠藤祐生/中村公亮/早瀬知之/石関 準/桑島貴洋/竹薮ヤケ太/鶴丸耕平/柳内佑介/関根信一

■日時:2008年3月19日(水)〜26日(水)
19日(水)(金)(月)(火)…19:30 (木)…14:00 (土)…14:00/19:30 (日)…14:00
26日(水)…14:00/19:00
■料金:3500円(前売) 3700円(当日) ※日時指定全席指定
■場所/住所:下北沢駅前劇場(小田急線下北沢南口徒歩0分)
東京都世田谷区北沢2-11-8 TAROビル3F (03-3414-0019)

■一般前売開始:2008年2月22日(金)10:00
■予約・問い合わせ先:劇団制作社
東京都豊島区南大塚3-6-5 第2市川ビル3F
(株)メジャーリーグ内 TEL:03-5949-4691 FAX:03-5949-4690
https://seisakusya.jp/

□公式ホームページ(劇団フライングステージ)
https://www.flyingstage.com/


|milk vol.-- 2008/02/22 |home2008

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