(毎月22日配信・無料) 【今月のメディアチェック】 クローズアップ現代 (NHK総合)

NHK(日本放送協会)は5月12日(月)、人気報道番組『クローズアップ現代』で性同一性障害の人々が抱える問題をテーマにした特集を総合テレビと衛星第1にて放映。神戸学院大学教授の大島俊之さんをスタジオに招き、昨年12月に女性への適合手術を受けた鳥取の藤村梨沙さん、世田谷区議選で上位当選を果たした上川あやさん、戸籍訂正を求める裁判を起こしている虎井まさ衛さん、および、医療関係者らの声を中心にした構成で、この障害に悩む人々が抱える問題点や現状について考えた。

番組前半では、1.自治体における公文書の性別記載欄撤廃の動きが進んでいること、2.性同一性障害になる原因は「(男子の場合)受精20週目ほどで分泌される男性ホルモンが何らかの原因で正常に脳に作用されず、体は男性、心は女性になってしまう(※同性愛者と全く同じしくみです)」つまり「生まれる前の段階にあると考えられている」こと、3.それらのしくみが医学的に「近年になってかなりわかってきた」ことなどを紹介。

後半部では、「人の性別は染色体で判断すべき」「国民的コンセンサスがない」「訂正を認めると重大な問題が生じる」の3つの理由からこれまでのところ、戸籍訂正を求める訴えをすべて却下している司法について言及。「現行法では性同一性障害に対応できず、立法化によって解決すべき」とする裁判所の声を紹介した上で、4.「過去に染色体がXYの方を長女と判断したことがあり、判例として一貫性が認められない」こと、5.「訂正を認めるべきでないという国民的な反対の声がない」こと、6.「訂正を認めた場合に起き得る重大な問題の具体例を裁判所が示していない」点をあげ、欧米諸国や韓国などに比べて立ち遅れている日本の司法の現状を指摘した。

また、「性同一性障害は特別なケースであり、国民的な議論が必要」として立法化に消極的な法務省に対して、議員立法という動きが出てきていることを紹介。与野党3党による骨子案が近くまとまり、戸籍訂正を認める上での要件をどうするかということが今後の注目点になるだろうとし、7.「要件を厳しくするか、緩やかにするかによって、どこまでの人が救済されるかが決まってくる」と伝えた。 番組は、「戸籍変更を認めると制度が悪用される恐れがあるのではないか?」という司会の国谷裕子さんの問いかけに対し、「人間の幸せのために法律があると思います。法律のために人間があるのではありません」という大島俊之さんの言葉で結ばれた。

■番組に対する意見・問い合わせ先:日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/plaza/mail_program/gendai.html

□OFFISIAL SITE (クローズアップ現代)
https://www.nhk.or.jp/gendai/index2.html


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