【東京新聞】漫画家タデノナギコさん・レズビアンでもそれが自分自身
■漫画家タデノナギコさん・レズビアンでもそれが自分自身
■6月18日付・東京新聞

漫画家・タデノナギコ(34)=ペンネーム、東京都杉並区=の現実は、8年前、初めて女性を好きになった時から始まった。 自分がレズビアンかもしれないというのはつらい認識だった。そこにはそれをつらいと感じる「自分」が、確かに存在していた。

1990年代初頭は、多様な性的少数者のコミュニティーが活動を活性化した時期でもあった。タデノもイベントの企画や演劇など様々な活動にかかわりながら、レズビアンを主人公とした漫画を書き始めた。

ごく自然に働いて、恋して悩むヒロインたち。彼女たちの孤独は、この社会がいかに異性愛という制度に依存しているかを逆照射する。空想でも男性向けポルノでもなく、等身大の女性同性愛者が描かれた反響は大きかった。作品は非異性愛女性を対象とした雑誌やレズビアン向けレディースコミック誌に掲載され、好評を博していた。

しかし、昨年から今年にかけて、これらの雑誌は次々と廃刊に追い込まれていった。ゲイ・カルチャーといっても市場がなければ成り立たない。経済的弱者も多い女性同性愛者の現実を、改めて示した形だった。

それでもタデノはアルバイトをしながら、発表するあてのないレズビアン漫画を描き続けるという。「自分の好きなものを知ることができて私は幸せ。あとは何とか生活できればいい」。それから、今、壁一面に真っ青な女の子の絵を描いていると楽しげに打ち明けた。


|milk vol.21 1999/09/22 |home1999

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