【読売新聞】同性愛者への犯罪・米で増加、先鋭化
■同性愛者への犯罪・米で増加、先鋭化
■10月24日付読売新聞

米ワイオミング州で、同性愛者の男子学生が惨殺された事件をきっかけに、同性愛者を標的とする犯罪の先鋭化が米国で注目を集めている。事件後、各地域で集会が開かれ、立法措置を急ぐよう求める声も高まっている。ところが、現行法を強化し、同性愛者への暴力を対象に加えた「新ヘイト・クライム防止法案」は、連邦議会で宙に浮いたまま。犯罪の増加や立法化の遅れの背景には、「同性愛は罪」と強調するキリスト教右派など宗教・倫理に踏み込んだ指摘もあり、議論をいっそう複雑にしている。

事件は10月7日夕、ワイオミング州ララミー市で、ワイオミング大学生、マシュー・シェパードさん(21)が頭がい骨が砕けるまで殴られたうえ、道端の堀に身体を縛り付けられ、意識不明の状態で発見されたもの。通りかかった人に救出されたが、5日後に死亡。21歳と22歳の容疑者2人が第一級殺人罪で逮捕・起訴され、警察は、犯行の動機を「ゲイ(同性愛者)バッシングと強盗」としている。

司法省の統計によると、96年に起きた「偏見に動機づけられた犯罪」(計8,759件)のうち、同性愛者が被害者となったケースは1,016件で全体の11.5%。また、民間団体「南部貧困法律センター」が物理的暴力が振るわれた被害者を分類した結果、同性愛者は黒人の二倍、ユダヤ系や中南米系の六倍という結果だった。

米国では、公民権運動が盛んだった68年、人種、肌の色、出身国、宗教を理由に、投票や教育を受けようとする人に嫌がらせや暴力を加えることを禁じた連邦法が制定されている。同法の対象を同性愛者をターゲットにした犯罪に拡大する新たな「ヘイト・クライム防止法案」が昨年秋、連邦議会に上程された。

クリントン大統領は事件後、「憎悪(ヘイト)と偏見はアメリカ人が持つべきものではない」と語り、議会に対して法案の成立を促しているが、審議はなお継続中。「同性愛は罪」「同性愛は治療可能」とのキリスト教右派勢力のキャンペーンなど、同性愛イコール病気で、存在と権利を認めるべきではないとの見方が広がっており、法案への反対が根強いからだ。


|milk vol.11 1998/11/22 |home1998

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