【今月の新刊】 第40回文藝賞受賞作 『魔女の息子』

40を目前にしたゲイのフリーライター和紀は、さしたる望みもないまま、 細々と食いつなぐ毎日を送っていた。11年前に父親を亡くし、77歳の母 親と二人暮らし。兄は実家を離れ、妻子と幸せな家庭を築いている。そ んな和紀の日常を彩るのは、辣腕編集者のかおりら、凄まじくも愛すべ きオンナたち。寂しくなると和紀の足はハッテン旅館に向かい、行きず りの男と死を擬似的に分かちあう。だが、老いらくの恋に燃える母親の 姿を目にするうちに、過去の人生に残してきたさまざまな思いが彼の中 でうずき始めていく…。

応募総数1862編という、かつてないハイレベルな争いになった今年の文 藝賞を制した伏見憲明氏による自伝的処女作品。606ページに及ぶ大著 『ゲイという[経験]』で、およそ10年に及ぶアクティビスト的な活動を 一区切りさせた伏見憲明氏が、デビュー作『プライベート・ゲイ・ライ フ』('91)で脚光を浴びたときと重なるように、「身を切って書いた」 処女小説によって、輝かしい門出を再び迎えることになった。今後は、 わたしたちの代弁者である伏見憲明さんからわたしたち自身も卒業し、 一人の人間としての「伏見憲明」の活躍ぶりを注目していきましょう。

■著者:伏見憲明/価格:1,200円
■発行・問い合わせ先:河出書房新社
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷2-32-2
TEL:03-3404-1201 (営業部) FAX:03-3404-6386

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