【月間メディアチェック】東京新聞・「性同一性障害が社会に問うもの」シンポジウムをレポート
■「性同一性障害が社会に問うもの」シンポジウムを詳細にレポート
■7月23日付け東京新聞

心と体の性の不一致に悩む「性同一性障害」。これを取り巻く社会の諸問題について考えるシンポジウムが、先月都内で開かれたが、この様子を、東京新聞が紙面の半分近くを割いて写真付きで詳細にレポート。以下、その要約。

シンポジウムを主催したのは、性同一性障害を抱える当事者やその家族、医療関係者らでつくる「TSとTGを支える人々の会」(TSはトランスセクシャル、TGはトランスジェンダーの略)。治療としての性転換手術にゴーサインが出たいまも、当事者にとって不十分な社会の受け入れ態勢を改善するため、法律上の課題や教育、就職などの問題について、広く市民に理解を求めることが目的。

手術による性別変更は認められないとする解釈が一般的な戸籍の問題については、女性から男性への記載変更を求める民事訴訟(平成6年、横浜家裁が申し立て却下)を担当した長瀬幸雄弁護士が、「裁判所への申し立て事例が極端に少なく、性同一性障害について深く踏み込んだ議論がない。この一件をもって司法の見解と判断することはできず、解釈の議論はこれからといえる。」と発言。

さらに、1945年に初めて正式に性別変更を認めたスイスのほか、@「性転換法」が施行され、望む性で生きるための法的権利を保障しているスウェーデン、ドイツなどA行政レベルの判断で変更を認めているフランスやベルギーなどB国民健康保険証やパスポートなどに限り変更可能なイギリス―など、世界各国の実例を一つ一つ紹介。

偏見を取り除くために教育の重要性を訴えたのは、専修学校の国語講師を務める木谷麦子さん。性教育の授業の中で性同一性障害の問題を取り上げ、テレビのバラエティー番組などで面白おかしく扱われるイメージとは違って性の違和感に深刻に苦しんでいる人たちがいること、同性愛者とは違うこと、日常生活の困難などについて実際の当事者に話を聞くなどして、生徒たちの理解を図ってきた実践例が報告された。 木谷さんは、「子どもたちのなかにも当事者はいる。健康診断やトイレ、修学旅行での配慮など、男女別を基礎とした学校制度も変わらなければ」と力説した。

当事者では、ゲイバーを経営する坂本愛子さん(仮名)が「働いている人たちは、お店のなかでこそ明るく振る舞っていても、社会からは孤立して、休みの日はうつ状態で家に閉じこもっている。接客に向いてなくても、他では就職できないからお店に来る人もいるし、本当に悲しい思いをしている」と、社会の偏見の厳しさを吐露。

司会のお茶の水女子大学院博士課程在籍でヒューマン・セクシャリティーが専攻の東優子さんは、「自分らしさを追求しようとすると、社会とのブレが出るのが現実。もっと手術以外のサポート体制が必要」と話していた。

■問い合わせ先:TSとTGを支える人々の会
〒123-0845 東京都足立区西郵便局留 FTM日本気付


|milk vol.8 1998/08/22 |home1998

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