【MILKシネマ】公開直前・映画『アルマゲドン』徹底分析!!
タッチストーン・ピクチャーズ提供/ブエナビスタ配給
監督・製作:マイケル・ベイ 製作:ジェリー・ブラッカイマー/ゲイル・アン・ハート  脚本:J.J.エイブラムス 脚色:トニー・ギルロイ 製作総指揮・脚本:ジョナサン・ヘンスレー 撮影:ジョン・シュワルツマン  視覚効果監修:パット・マックラング 音楽:トレバー・ラビン
出演:ブルース・ウィルス/ベン・アフレック/リブ・タイラー/他
上映時間:2時間30分 98年度・米・シネマスコープサイズ


□筆者:MITSU 1972年7月生まれ・東京都出身。映画ライターとして東京国際映画祭などの取材を担当。 MILKでは創刊時より映画関連記事を執筆。映画製作、字幕製作などにも携わる

ストーリー&解説:
世界の大都市・ニューヨークが無数の隕石群に襲われた。NASAは 総力を結集して事態を緊急調査・分析し、アステロイド(小惑星)が地球 へ近づいている事実を突き止めた。しかし、その規模はこれまでの数km 程度ではなく、直径1000km以上のものだった。これが衝突すれば、地 球上の半分は熱で灰と化し、残りもその後の氷河期により凍死してしまう。 NASAはアステロイドの軌道を変化させるため、地盤の割れる240mの 地中の深さで核爆弾を爆発させる壮大なミッションを計画した…。

『ザ・ロック』('96)に続きマイケル・ベイとジェリー・ブラッカイマーの黄 金コンビが組んだ製作費用150億円のSFX超大作。製作には『エイリア ン2』('86)のゲイル・アン・ハート、視覚効果監修にはパット・マックラン グ、特殊効果監修に『ツイスター』('96)のジョン・フレイザー、音楽は イエスのトレバー・ラビン、主題歌はエアロ・スミスが担当。出演陣も ブルース・ウィルスをはじめ、ベン・アフレック、リブ・タイラーといった 豪華なヒットメーカーたちが集結した。

■ペンタゴン評価:2000円 T:4 S:4 C:4 P:4 M:4
(T:テンポ、S:ストーリー、A:キャスト・演出、P:映像、M:サウンド 5段階評定/2000円を超えるか、ひとつでも5がある場合、劇場で見る価値があることを示してます)

『タイタニック』が、国内配収160億円という空前の数字を達成できた理由 は、普段映画を見ない層の人たちまでも劇場に足を運ばせたことにある。 そして、普段劇場に足を運ばなかった人たちが、どうして映画館へ訪れた のかといえば、それは「ストーリーが面白いと評判だったから」という答えが きっと返ってくることだろう。

『アルマゲドン』のような典型的なハリウッド大作の場合、 映像的な技術力や、俳優陣の演技力に対して、 観客は不安を抱いていない。それらの部分での期待が過去に裏切られた経験がほとんどないからだ。 だから、映画館へ足を運んだ理由として、 「CGの技術が優れていると評判だから」とか、「ディカプリオの 演技が素晴らしいと評判だったから」などと答える人は少ないはずなのだ。

普段映画を見ない層の人たちが、劇場に足を運ぶ前にお金を支 払うことをためらってしまう一番の理由は、過去のトラウマがそうさせるのか、 「ストーリーの質」に不安を覚えているからだと考えられる。 最近、ハリウッドの各映画製作会社が、多額の製作費を要する超大作は 今後縮小させていくという方向性を明らかにしているが、それは、突出した 費用ばかりかかる映像的な技術力が、コストに見合うだけのソフトの売上向 上に寄与しなくなってきていることが背景にある。かつてはストーリーをない がしろにしても、映像の技術力だけである程度のヒットを見込めていたものが、 今ではまるで通用しなくなってきている。

すると、現在ハリウッドの超大作が作られる際に大前提となっているものに、 脚本の完成度の高さということがある。脚本の完成度がよっぽど高くなければ、 最新の映像技術を用いるための巨額の製作費もかけられない。 『アルマゲドン』のように、1700名ものCG技術スタッフを導入し、 1年以上もの莫大な時間をかけて作り上げているような作品は、 映画会社が脚本の出来に自信を持っている証しでもあるわけだ。

見所は、VFX技術を駆使したハイレベルな映像の数々は言うまでもなく、 技術的な考証にNASAの全面的な協力を得たという脚本の完成度の高さ。 過去に、アステロイドが確認されたケースに実際にとられたNASAの対応が、 そのまま脚本に生かされている箇所も多く存在し、リアルな緊張感を味わう ことができる。目的を達成する段階に至るまでに直面する困難も、すべて現 実に起こりうる想定不可能なことが、テンポよく緻密に描かれているのは、 素直に評価したいところだ。

また、劇中にベン・アフレック演じるA.J.フロストが、下手な?歌を歌うという 印象的なシーンがあるが、これはカナダの新人シンガー、シャンタール・クレ ヴィアジックの「リーヴィング・オン・ア・プレイン」が原曲。エンド・タイトルで 「I don't want to miss a thing」の後に、フルコーラスでオリジナル版が流れ るのでそちらもお聞き逃しのないように。

本編の撮影は、1997年8月27日サウス・ダコタ州カドカで始まり、1998年 2月18日ロサンゼルスの聖ブレンダン教会にて終了した。スペースシャトル の打ち上げシーンは、1997年5月半ばにフロリダ州ケネディ・スペース・セ ンターで行われたアトランタ号の打ち上げを映画用に収めたもので、NASA のテクノロジーを近未来的に見えるように特殊視覚効果が加えられている。

□公式ホームページ(ブエナビスタ)
https://www.movies.co.jp


|milk vol.12 1998/12/22 |home1998

このページのトップへ戻る